エクオールの記事を書いたとき、これほど「知っているのに書けない」と感じたテーマはありませんでした。

メーカーの勉強会に何度か参加し、シワ改善のデータや骨密度への影響に関する研究を聞いてきました。自分自身でエクオール産生テストも受けました。それだけの知識があるのに、記事として表現できる範囲がとても限られている——これがエクオールという題材の難しさです。

エクオールとは何か

エクオールは、大豆イソフラボンの一種であるダイゼインが腸内細菌によって代謝されてできる物質です。

女性ホルモン(エストロゲン)と構造が似ており、更年期以降のエストロゲン低下に伴う変化に関与する可能性があるとして、研究が進んでいます。

エクオールを「作れる人」と「作れない人」がいる

エクオールの特徴のひとつが、産生には個人差があることです。

大豆食品を摂取しても、腸内でエクオールを産生できるのは日本人の約50%とされています。残りの約50%はエクオールを産生する腸内細菌を持っていないため、大豆を食べてもエクオールが作られません。

このため「エクオールを産生できるかどうか」を調べる尿検査キットが市販されています。私自身もこのテストを受けたことがあり、自分がエクオールを産生できるタイプかどうかを把握しています。産生できない場合は、サプリメントで直接エクオールを摂取する選択肢があります。

研究データでわかっていること

エクオールに関しては、国内外で多くの研究が行われています。勉強会で紹介されたデータも含め、研究として報告されている内容は多岐にわたります。

  • 更年期症状(ほてり・のぼせ)との関連
  • 肌のハリ・シワへの影響
  • 骨密度との関連
  • 動脈硬化リスクとの関連

これらは、学術論文や企業の研究として発表されているデータです。

しかし、ここが薬剤師ライターとして最も悩む部分です。

なぜ記事に書けないのか

エクオールサプリメントは、食品です。医薬品でも医薬部外品でもありません。

食品である以上、薬機法上、特定の症状や疾患への効果を標榜することはできません。研究データとして存在していても、それをサプリメントの効果として記事に書くことは、薬機法上問題になる可能性があります。

NGになりやすい表現:

  • 「エクオールで更年期のほてりが改善する」
  • 「シワが減少することが研究で証明されている」
  • 「骨密度低下を防ぐエクオール」
  • 「エストロゲン様作用で女性の悩みをサポート」

「研究で明らかになっている」という事実と、「サプリとして効果を表示できる」という話は、薬機法上まったく別の問題です。どれだけ科学的な根拠があっても、食品として販売されている限り、効能効果の表現には制約があります。

言い換えの例:

  • 「大豆由来の成分エクオールを配合しています」
  • 「エクオール産生が気になる方に」
  • 「女性の健康習慣をサポートする成分として注目されています」

「注目されています」「関心が高まっています」という表現で研究の存在を示唆することはできますが、効果の断定はできません。

機能性表示食品なら何が書けるか

一部のエクオールサプリは、機能性表示食品として消費者庁に届出を行っています。

届出が受理された機能性表示食品であれば、届出内容に基づいた機能性の表示が認められています。記事を書く前に、対象商品が機能性表示食品かどうか、どのような機能性で届出されているかを確認することが重要です。

機能性表示食品の届出内容は消費者庁のデータベースで公開されており、届出された機能性の表現をそのまま使うことが可能です。

ただし届出内容の範囲を超えた表現は、機能性表示食品であっても問題になります。「届出されているから何でも書ける」ではありません。

大塚製薬のエクエルは機能性表示食品として届出されており、商品ページで実際にどのような表現が使われているか確認してみてください。

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エクオール産生テストについての書き方

エクオール産生テストは、尿を使って自分がエクオールを産生できるかを調べるキットです。ドラッグストアや通販でも購入できます。

このテストについて記事で触れる場合も注意が必要です。

問題になりやすい表現:

  • 「エクオールを産生できない人はサプリを飲むべき」
  • 「テストで産生できないとわかったらエクオールサプリで補おう」

「べき」「補おう」という表現は、医薬品的な必要性の示唆につながる場合があります。

書き方の例:

  • 「エクオールを産生できるかどうかを調べるテストがあります」
  • 「産生タイプかどうかを把握した上で、サプリを選ぶ方もいます」

事実の説明と、選択肢の紹介にとどめます。

エクオール産生テストは、市販のキットで受けられます。記事で紹介する前に実際の商品を確認しておくと、「テストで何がわかるか」「どんな人向けか」の説明に役立ちます。

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薬剤師ライターとしての向き合い方

エクオールの記事を書くとき、私が意識していることは一つです。

「自分が知っていることと、記事に書けることは別」という割り切りです。

勉強会で得た知識、研究データ、個人的な体験——これらは記事の信頼性を高めるための「判断基準」として活きます。どこまでが適切な表現かを判断するために、知識は必要です。しかし、その知識をそのまま記事に乗せることはできません。

書けない表現を知っているからこそ、クライアントに対して「この表現は薬機法上問題になります」と伝えられる。それが薬剤師ライターとしての価値だと思っています。

まとめ:エクオール記事で気をつけるポイント

  1. エクオールサプリは食品区分のため、更年期症状・シワ・骨密度への効果は書けない
  2. 研究データが存在しても、食品の効能効果として表示することはできない
  3. 機能性表示食品として届出されている場合は、届出内容の範囲内で表現できる
  4. エクオール産生テストについては「調べられる」という事実の紹介にとどめる
  5. 「注目されています」「関心が高まっています」で研究の存在を示唆するにとどめる

知識があるほど、書けない悔しさを感じるジャンルです。それでも、その知識が正確な判断につながります。薬機法の基本を押さえた上で、丁寧に表現を選ぶことが、エクオール記事では特に重要です。