「記事を書こうとしたら、どの情報を信じればいいかわからなくなった」
医療ライターとして記事を書くとき、情報の信頼性の判断は最も重要なスキルのひとつです。
私が実際によく使うのは、厚生労働省・学会ガイドライン・PubMedの3つです。テーマによっては国立病院のサイトを参考にすることもあります。それぞれ役割が異なるので、目的に合わせて使い分けています。
間違った情報を記事に載せると、読者に誤った行動をとらせてしまいます。特に医療情報は、命に関わる場合もあります。
医療記事で使ってはいけない情報源
まず、「使わない情報源」を明確にしておきます。
個人ブログ・まとめサイト
個人ブログは、書いた人の経験や解釈が混じっています。医学的に正確かどうかは保証されません。
「〇〇に効いた」という個人の体験談は、一般化できる医療情報ではありません。
Wikipedia
Wikipedia は誰でも編集できるため、内容が常に正確とは限りません。概要を把握するための参考にはなりますが、記事の根拠として使うことは避けます。
製品メーカーのサイト(一部)
製品の販売を目的としているため、自社製品に有利な情報が強調されることがあります。成分・原料の情報として参照する場合でも、他の情報源との照合が必要です。
SNS・動画サービス
医師・薬剤師のアカウントであっても、SNSや動画の情報は査読を経ていません。参考程度にとどめ、一次情報で確認します。
医療記事で使うべき信頼できる情報源
添付文書・インタビューフォーム
薬剤師ライターが最も活用すべき情報源のひとつです。
添付文書には、薬の効能・効果・用法・用量・副作用・禁忌が記載されています。インタビューフォームはさらに詳細な薬学的情報が含まれています。
医薬品医療機器情報提供ホームページ(PMDA)から無料で検索・閲覧できます。
PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)
pmda.go.jp
承認された医薬品の添付文書・審査報告書・副作用情報が掲載されています。薬に関する記事を書くとき、最初に確認すべきサイトです。
厚生労働省
mhlw.go.jp
医療政策・ガイドライン・統計データが掲載されています。薬機法・医療広告ガイドラインの原文もここで確認できます。
記事内で数値データを使うとき(患者数・有病率・統計など)は、まず厚生労働省のページを確認します。「患者調査」「国民健康・栄養調査」など定期的に更新される統計データが揃っており、出典として明記しやすいのも利点です。
各学会のガイドライン
日本小児科学会・日本内科学会・日本泌尿器科学会など、各専門学会が発行するガイドラインは、その分野の標準的な治療方針を示しています。
「現在の標準治療はどうか」を調べるとき、学会ガイドラインは参考になります。ただし、そのガイドラインが国の施策・行政方針に反映されているかどうかで、信頼性の重みが変わります。私自身、小児発達障害・泌尿器科・漢方の記事を書くときは、学会ガイドラインと厚生労働省の方針を照合しながら確認しています。
PubMed(英語)
世界最大の医学・生命科学の文献データベースです。英語論文が中心ですが、エビデンスレベルの高い情報を確認したいとき、抄録(Abstract)だけでも参照する価値があります。
全文を読まなくても、抄録から「この治療法のエビデンスの強さ」や「研究の規模・対象」を把握できます。一般向け記事でも「〇〇という研究で確認されています」と添えると記事の信頼性が上がります。
国立病院・研究センターのサイト
国立精神・神経医療研究センター・国立がん研究センター・国立成育医療研究センターなど、専門領域の国立機関が公開しているページは信頼性が高く、患者・家族向けにわかりやすく書かれていることが多いです。
一般読者向けの言葉遣いの参考にもなります。
リサーチの手順
ステップ1:まず一次情報を探す
記事テーマが決まったら、まず厚生労働省・PMDA・国立研究機関から一次情報を探します。
検索エンジンで調べる前に、厚生労働省や PMDAのサイトを直接確認する習慣をつけます。学会ガイドラインは、その後に照合する形で参照します。
ステップ2:情報の「いつ」を確認する
医療情報は更新されます。
ガイドラインは改訂されることがあります。添付文書も改訂されることがあります。情報源の発行日・最終更新日を確認し、古い情報を使っていないか確認します。
ステップ3:複数の情報源を照合する
1つの情報源だけに頼らず、同じ内容を複数の信頼できる情報源で確認します。
情報源によって内容が異なる場合は、厚生労働省・PMDA・国立研究機関など国の機関の情報を優先します。学会ガイドラインは参考になりますが、そのガイドラインが国の施策や方針に反映されているかどうかで、信頼性の重みが変わります。国の機関と照合しながら判断するのが基本です。
ステップ4:自分の解釈を加えすぎない
薬剤師として「この薬はこうだ」という知識があっても、根拠となる情報源を必ず確認します。
記憶は不正確なことがあります。「知っている」と思っていても、情報が古い場合や例外があります。
参照した情報源を記録しておく
記事を書きながら、参照した情報源のURLや書籍名をメモしておきます。
クライアントから「この情報の根拠は?」と聞かれたとき、すぐに提示できる状態にしておきます。また、記事内に「参考文献」として掲載できる場合は、記事の信頼性が上がります。
まとめ:医療記事のリサーチは「一次情報」が基本
医療記事のリサーチで押さえるポイントをまとめます。
- 個人ブログ・Wikipedia・SNSは根拠として使わない
- 厚生労働省・PMDA・国立研究機関・添付文書を最初に確認する
- 情報の発行日・更新日を確認し、古い情報に注意する
- 複数の情報源で内容を照合する
- 参照した情報源をメモしておく
「薬剤師だから知っている」ではなく、「情報源を確認した上で書く」という姿勢が、医療ライターとしての信頼につながります。
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