「ライターになりたいけど、未経験でもできるのかな」
薬剤師として働きながら、そう思っていた時期がありました。
文章を書く仕事は、もともと文章が得意な人や、編集・出版の経験がある人がするものだと思っていました。薬剤師がライターになるなんて、遠回りな話だと。
でも実際に始めてみると、薬剤師であることが強みになる場面がたくさんありました。この記事では、私が未経験から医療ライターになるまでの経緯を、正直に書いていきます。
きっかけは「自分の知識を活かしたい」という気持ちだった
薬剤師として働く中で、患者さんに薬の説明をする場面は毎日あります。
「この薬はなぜ飲むのか」「副作用が出たらどうするか」「飲み合わせで気をつけることは何か」——こうした内容を、相手に伝わるように話すことが仕事の一部でした。
あるとき、インターネットで医薬品の情報を調べていると、内容が不正確な記事をいくつか見かけました。一般の人が読んで誤解しかねない表現が、当たり前のように載っていました。
「これなら、自分の方が正確な情報を書けるのではないか」
それが、医療ライターという仕事を意識したきっかけでした。
最初の1年は「どこから始めればいいか」がわからなかった
ライターになりたいと思ってから、しばらくは何もできていませんでした。
調べれば調べるほど、やることが多く見えました。ポートフォリオが必要、クラウドソーシングに登録する、SNSで発信する——どれが正解かわからず、結局何も行動できない日が続きました。
転機になったのは、「まず1本書いてみる」と決めたことです。
完成度は問わない。ポートフォリオとして使えなくてもいい。とにかく書いてみる、というところから始めました。
最初に書いた記事のテーマ
最初に書いたのは、自分が日常業務でよく質問される内容でした。
私の専門は小児発達障害です。保護者の方から「子どもにADHDの薬を飲ませていいのか」と聞かれることが、日常的にありました。
不安を抱えた保護者がネットで調べると、不正確な情報や感情的な記事ばかりが出てくる。それが気になっていたので、「子どもがADHDの薬を飲む前に知っておいてほしいこと」というテーマで書いてみました。
何度も保護者に説明してきた内容だったので、構成を考える必要がなく、自然に言葉が出てきました。
書き終えてみると、2,500字ほどの記事になっていました。文章が上手いかどうかより、「正確な情報を不安な人に届ける」という部分が、薬剤師の日常業務と重なっていると気づきました。
クラウドソーシングで初めて報酬を得るまで
記事を1本書いた後、クラウドワークスに登録しました。
最初はどんな案件に応募すればいいか迷いましたが、「医療・健康」カテゴリに絞って探しました。条件は一つだけ——「薬剤師・医療従事者歓迎」と書いてある案件です。
最初の応募で失敗したこと
最初の応募は、採用されませんでした。
今振り返ると、理由はわかります。応募文が「やる気はあります」という内容で、具体的な実績も専門性の説明もなかったからです。
採用担当者の立場から見れば、「薬剤師ライター未経験」という情報だけでは、何ができるか想像できません。
採用された応募文との違い
2件目の応募では、応募文を変えました。
- 薬剤師免許の保有と勤務先の種別を冒頭に書いた
- 得意なテーマ(小児発達障害・小児科・一般内科・泌尿器科・漢方)を具体的に書いた
- 「医療情報の正確性と読者への伝わりやすさを両立させます」と書いた
この変更だけで、採用の返信が来ました。
報酬は文字単価0.6円、3,000文字の記事で1,800円でした。単価として高くはありませんでしたが、「薬剤師としての知識に価値がある」と実感した瞬間でした。
継続案件になるまでに意識したこと
初案件を受けた後、同じクライアントから継続依頼をもらえるようになりました。
継続につながった理由として、自分なりに分析しているのは以下の3点です。
納期を守ることを最優先にした
当たり前に聞こえるかもしれませんが、これが一番重要でした。
薬局勤務は夜遅くなることもあります。それでも、依頼を受けた期日は必ず守りました。もし間に合わない可能性があるときは、早めに連絡するようにしていました。
クライアントにとって、納期を守るライターは信頼できるパートナーです。品質が少し未熟でも、信頼関係があれば修正のチャンスをもらえます。
修正依頼を「勉強の機会」として受け取った
最初の頃は、修正依頼が来るたびに落ち込んでいました。
でも、修正のコメントを読んでいくうちに、「この媒体の読者はこういう情報を求めている」「この表現は一般の方には伝わりにくい」という感覚が身についてきました。
修正対応を丁寧に行うことで、次の記事の品質が上がり、修正が少なくなっていきました。
納品時に次の提案を添えた
記事を納品するとき、「関連テーマであれば次もお手伝いできます」と一言添えるようにしました。
依頼待ちではなく、自分から動く姿勢を示すことで、クライアントが次の案件を依頼しやすくなります。
未経験からでも始められる理由
医療ライターは、ライティングの経験よりも「正確な医療情報を持っているか」が重視されます。
一般のライターが医療記事を書こうとすると、専門的な知識を一から調べる必要があります。しかし薬剤師であれば、日常業務で扱っている内容を文章にするだけです。
「書く技術」は、書き続けることで後から身につきます。一方、「医療の知識」は、薬剤師免許という形で既に手元にあります。
未経験から始めるとしても、薬剤師は出発点が一般のライターとは違います。
まとめ:最初の一歩は「1本書くこと」
未経験から医療ライターになるまでの流れをまとめます。
- 自分が詳しいテーマで1本書いてみる
- クラウドソーシングに登録し、医療・健康カテゴリの案件を探す
- 応募文に薬剤師免許と得意テーマを具体的に書く
- 初案件を受け、納期・修正対応を丁寧に行う
- 継続依頼につなげながら実績を積む
最初から完璧な記事を書こうとしなくていいです。薬剤師として持っている知識は、そのままライターの強みになります。
まず1本、書いてみることから始めましょう。
次の記事では、医療記事の構成の作り方を解説します。読まれる記事には共通の「型」があります。その型を使えば、どんなテーマでも迷わず書けるようになります。 医療記事の構成の作り方:読まれる型を薬剤師ライターが解説