薬剤師ライターとして最初の案件を取るまでの期間が、一番しんどかったと思います。

薬の知識はありました。でも、文章を書く力があるかどうかは自信がありませんでした。そしてなかなか前に進めなかった理由は、自分の書いたものが正しいのかどうか、判断できなかったことでもありました。

テストライティングの結果は「採否」しかわからない

クラウドソーシングで案件に応募すると、テストライティングを求められることがよくあります。

指定されたテーマで記事を書いて提出します。その結果として返ってくるのは、「採用」か「不採用」か、それだけです。

不採用だったとき、何がいけなかったのかはわかりません。

  • 構成が悪かったのか
  • 表現が硬すぎたのか
  • 医療情報として不正確だったのか
  • 単純に他の応募者のほうが良かっただけなのか

フィードバックがないまま次の案件に応募します。また不採用になる。何を直せばいいかわからないまま、また書く——この繰り返しが続きました。

提出前に自分でチェックできること

フィードバックがもらえない環境でも、提出前に確認できることがあります。

まず指示の確認です。文字数・見出し数・禁止ワード・参照資料などの条件を守れているかを確認します。これが守られていないだけで、内容以前の問題として不採用になるケースがあります。

次に読み返しです。時間をおいてから声に出して読むと、不自然な箇所が見えやすくなります。また薬機法の観点でも確認が必要です。効果の断言・医薬品的な表現・根拠のない比較表現が含まれていないかをチェックします。この点については、薬機法チェック:禁止表現と言い換えの基本にまとめていますので参考にしてください。

不採用は「あなたの文章が悪かった」という判断ではなく、「今回は別の方が選ばれた」というだけのことも多いです。不採用の通知一件ずつに意味を見出そうとするより、応募数を重ねることに集中したほうが結果的に早く進みます。

「これで合っているのか」を確認できる人がいない

医療ライティングには、一般のライティングとは別の難しさがあります。

薬機法の表現、医療情報の正確さ、読者への伝え方——これらが正しいかどうかを判断できる人が、周囲にいませんでした。

薬剤師の同僚に見せることも考えませんでした。副業をしていることを知られたくない事情もありましたし、「ライティングとして良いかどうか」を評価できる相手でもありませんでした。

クライアントに提出する前に誰かに確認したい。でも確認できる相手がいない。この状況が、0→1の時期を長くした一因でした。

当時あったら使いたかったもの

今であれば、AIを壁打ち相手として使うことができます。

書いた文章をAIに読んでもらい、「この表現は薬機法上問題ないか」「構成として伝わるか」「読者にとってわかりやすいか」を確認することができます。完璧な判断はできないとしても、「何がひっかかるか」を指摘してもらうだけでも大きな助けになります。

AIへの具体的な聞き方

「この文章はいいですか?」という聞き方では、表面的な回答しか得られません。次のような形で具体的に聞くと実用的なフィードバックが得られます。

  • 「以下の文章は薬機法の観点で問題のある表現が含まれていますか。含まれているとしたらどのように言い換えればよいですか」
  • 「以下の文章を、医療の知識がない一般の40代女性が読んだときに、わかりにくいと感じる部分はどこですか」

ただし薬機法の判断についてはAIの回答はあくまで「参考」として使い、最終判断は自分で行う姿勢が重要です。

0→1を乗り越えた理由

正直に言うと、特別なことはしていません。

不採用が続いても応募をやめなかった、それだけです。振り返って思うのは、「正解がわからない」ことへの耐性が少しずつついていったということです。

ある時期から、応募した案件の結果をメモするようにしました。何件応募して何件がテストライティングに進んで何件採用されたか。数字にして並べてみると、感覚では「全然採用されない」と思っていても「10件応募して2件がテストライティングまで進んでいる」という事実が見えてきます。記録があると「どういう案件が通りやすいか」という傾向も見えてきます。

「正解を探す」から「今の自分のベストを出す」に意識が切り替わったとき、提出することへのハードルが少し下がった気がします。完璧でなくても提出できる、という感覚が持てるようになってから、応募のペースが上がりました。

最初の1件が取れたあとは早い

最初の案件を取ってしまえば、状況は変わります。

クライアントからの修正依頼やフィードバックが、自分の文章の「答え合わせ」になります。修正を重ねるたびに、そのクライアントが何を求めているかがわかってきます。

実績が1件できると、次の応募でも「1件経験があります」と書けます。ポートフォリオに掲載できます。評価がつきます。0の状態と1の状態では、スタート地点がまったく違います。

最初に採用されたクライアントとの仕事では、修正依頼への迅速な対応と、フィードバックを次の記事にすぐ反映することを徹底しました。修正を「このクライアントが大切にしていること」という情報として受け取ることで、2本目・3本目と重ねるうちに修正が減り、継続の依頼につながりました。

まとめ

  • テストライティングの不採用理由はわからないことがほとんど。落ち込みすぎない
  • 提出前に確認できることをやりきれば、あとは確率の問題
  • 孤独を感じるのは正常。今はAIを壁打ち相手として使える
  • 応募数を記録することで「見えない状態」を少し解消できる
  • 0→1は改善よりも「続けること」で乗り越えた
  • 最初の1件が取れれば、そこからは学習サイクルが回り始める

正解がわからないまま書き続けることへの不安は、どの薬剤師ライター志望の方も感じると思います。その孤独は、0→1の通過儀礼のようなものかもしれません。

案件の取り方や応募の具体的なステップは、薬剤師ライターの始め方にまとめています。