医療記事を書いていると、必ず数字が出てきます。
「日本の高血圧患者は約〇〇万人」「この治療で〇%が改善」「副作用の発現率は〇%」——こうした数字は記事の説得力を高めますが、根拠を確認せずに書くと、誤情報を広めるリスクがあります。
どの情報源で、どう裏取りすればいいのか。この記事では、数字・統計の確認手順を具体的に解説します。信頼できる情報源全般の選び方は医療記事のリサーチ方法もあわせてご覧ください。
なぜ数字の裏取りが重要なのか
数字は、記事の中で最も「コピペされやすく」「独り歩きしやすい」要素です。
- ネット上で見た数字を、根拠を確認せず引用してしまう
- 古い統計の数字を、最新のものとして使ってしまう
- 論文の数字を、文脈を無視して切り取ってしまう
こうしたミスは、薬剤師ライターでも起こります。「なんとなく知っている数字」ほど危険で、必ず一次情報で確認する習慣が必要です。
数字の種類別・確認先の早見表
数字には種類があり、それぞれ確認すべき一次情報が異なります。
| 数字の種類 | 例 | 主な確認先 |
|---|---|---|
| 患者数・有病率 | 「高血圧患者は約〇万人」 | 厚生労働省「患者調査」「国民健康・栄養調査」 |
| 死亡数・死因 | 「がんによる死亡は年間約〇万人」 | 厚生労働省「人口動態統計」 |
| 薬の効果・副作用の発現率 | 「副作用の発現率は〇%」 | 添付文書・インタビューフォーム(PMDA) |
| 治療のエビデンス | 「〇%で症状が改善」 | 学会ガイドライン・論文(PubMed) |
| 健康習慣・喫煙率など | 「成人喫煙率は〇%」 | 厚生労働省「国民健康・栄養調査」 |
「この数字はどの種類か」を見極めることが、裏取りの第一歩です。
手順①:患者数・統計データは厚労省で確認する
「患者数」「有病率」「喫煙率」などの統計は、厚生労働省の調査が一次情報です。
よく使う厚労省の統計
- 患者調査:傷病別の患者数。3年ごとに実施
- 人口動態統計:出生・死亡・死因など。毎年更新
- 国民健康・栄養調査:生活習慣・栄養・喫煙・飲酒など
患者数は患者調査が基本ですが、テーマによっては国民生活基礎調査など別の統計のほうが適切な場合もあります。「その数字を出すのに最も適した調査はどれか」を意識して選びましょう。
確認の手順
- 厚生労働省サイト(mhlw.go.jp)で統計名を検索する
- 最新版の調査結果(PDFまたは統計表)を開く
- 該当する数字を確認し、調査年をメモする
- 記事には「厚生労働省『患者調査』(〇年)によると」と出典・年を明記する
ネット記事に書かれた数字をそのまま使うのではなく、必ず元の統計表まで遡ることが大切です。
手順②:薬の副作用・効果は添付文書で確認する
薬の効果や副作用の発現率は、添付文書・インタビューフォームが一次情報です。これは薬剤師ライターが最も強みを発揮できる部分です。
確認の手順
- PMDA(pmda.go.jp)の医薬品情報検索で薬剤名を検索する
- 添付文書を開く
- 「臨床成績」「副作用」の項目で該当する数字を確認する
- 添付文書で足りなければ、インタビューフォームや審査報告書(PMDAで公開)まで確認する
「副作用がほとんどない」といった曖昧な表現ではなく、「添付文書では〇〇の発現率は〇%と記載」と正確に書くことで、記事の信頼性が上がります。
手順③:論文・研究の数字は元論文まで遡る
「〇%が改善した」といった研究ベースの数字は、孫引きが特に危険です。
注意したいこと
- ニュース記事やまとめサイトが引用した数字を、そのまま使わない
- 「〇〇大学の研究」とだけ書かれていて、元論文が不明な数字は使わない
- 論文の数字は、対象者数・期間・条件とセットで理解する
確認の手順
- 数字の出どころ(論文名・著者・掲載誌)を特定する
- PubMedなどで元論文のAbstract(抄録)を確認する
- その数字が「どんな対象・規模・条件の研究か」を把握する
- 文脈を無視した切り取りにならないよう、記事に反映する
全文を読めなくても、Abstractで研究の規模や対象を確認するだけで、数字の信頼性を判断できます。重要な数字や微妙な解釈が問われる場合は、Abstractだけで判断せず、本文や図表まで確認すると確実です。
手順④:数字には必ず「いつ」を添える
医療統計は更新されます。古い数字を最新のものとして使うのは、よくあるミスです。
- 統計データには調査年を明記する(「2023年の患者調査によると」)
- ガイドラインの数字には改訂年を確認する
- 添付文書も改訂されるため、最新版を確認する
「約〇万人」という数字だけでなく、「いつ時点の数字か」をセットで書くことで、記事の正確性と信頼性が保たれます。
出典の書き方
記事に数字を入れたら、出典を明記します。媒体によって表記ルールは異なりますが、基本は以下です。
- 統計データ:「厚生労働省『患者調査』(2023年)」
- 薬の情報:「〇〇(薬剤名)添付文書」
- 論文:「著者名, 掲載誌, 発表年」
クライアントから「この数字の根拠は?」と聞かれてもすぐ答えられるよう、執筆中に参照したURL・資料をメモしておく習慣をつけましょう。
まとめ:数字は「種類を見極めて一次情報で確認」
医療記事の数字の裏取りで押さえるポイントをまとめます。
- 数字の種類(患者数・副作用率・研究データなど)を見極める
- 患者数・統計は厚生労働省の調査で確認する
- 薬の効果・副作用は添付文書・インタビューフォーム(PMDA)で確認する
- 研究の数字は元論文のAbstractまで遡る
- 数字には必ず「いつ時点か」を添え、出典を明記する
「なんとなく知っている数字」ほど、一次情報で確認する。この姿勢が、薬剤師ライターとしての信頼につながります。
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