「50代の薬剤師は使えない」と検索してこのページに来た方は、職場で自分がそう思われているのではないか、と気になっているのかもしれません。
調剤薬局で働く50代の薬剤師として、実感を書きます。
先に結論を言うと、現場で年齢のせいで困る場面は、ほとんどありません。パソコンも新しい薬も、年齢だけで差が決まるものではないからです。
ただし、覚えることが尽きないのは何歳でも同じです。そして転職となると、話は少し変わります。この記事は、その両方を書いたものです。
「50代の薬剤師は使えない」と言われる4つの理由
転職サイトの記事を読むと、挙げられている理由はだいたい同じです。
- 新しいことを覚えられない
- これまでのやり方にこだわる
- 体力がもたない
- 若い薬剤師とうまくやれない
どれも、現場にいる私から見ると少しずれています。ひとつずつ、実感を並べてみます。
| よく挙げられる理由 | 現場にいる私の実感 |
|---|---|
| 新しいことを覚えられない | 覚えるのに時間がかかる人はいます。ただ、年齢で決まることではないと思っています |
| これまでのやり方にこだわる | 私は、異動すればその店舗のやり方に合わせますし、薬歴が入れ替われば対応しています |
| 体力がもたない | 30代でもつらそうな人はいますし、60代でも元気な人もいます |
| 若い薬剤師とうまくやれない | 年齢だけで人間関係が決まるとは感じません。きつい言い方をされたことはありますが、ひとりの新入社員との間だけでした |
ここから先は、この4つをひとつずつ書いていきます。
新しいことを覚えるのに努力が要るのは、何歳でも同じ
「新しいことを覚えられない」は、年齢の問題として語られがちです。けれど現場にいると、そうは感じません。
パソコンは、むしろ若い人より好きなほう
私はパソコンでついていけないと感じたことがありません。パソコンはどちらかというと好きなほうで、入力の速さも若い人に負けているとは思いません。
電子薬歴もレセコンも、毎日さわっていれば手が覚えます。調剤薬局で働き続けてきた人であれば、ここでつまずくことは少ないのではないかと思います。
「50代だからパソコンが苦手」と一括りにされるのは、実感と合いません。
新しい薬は、全員が一から覚える
新しい薬が出たとき、それが新しいのは全員にとって同じです。20代も50代も、覚え始める地点は変わりません。
現役で続けている限り、覚えることはずっと出てきます。
ここも、年齢で差がつくところではないと感じています。
覚えるのに時間がかかる人もいる
一方で、覚えるのに時間がかかる人がいるのも事実です。これは年齢に関係なく、人によります。
時間がかかるなら、その分やるしかありません。これは何歳でも同じです。年齢を理由にできる場面は、実際にはあまりないと思っています。
そのうえで、ひとつだけ書いておきます。未経験から調剤薬局の仕事を始めるとなると、50代では難しいと思います。覚えることの量が違うからです。
職場のやり方が変わったときは、その都度合わせている
「これまでのやり方にこだわる」も、よく挙げられる理由です。
私の場合は、新しい店舗に異動になったら、その店舗のやり方に合わせています。薬局ごとに手順や置き場所は違うので、前の店舗のやり方を持ち込んでも仕方がありません。
薬歴のシステムが入れ替わったときも、そのつど対応してきました。入れ替えは自分の意思とは関係なく決まるものなので、慣れるしかありません。
もちろん、自分のやり方を通すこともあります。ただ、より良いやり方を提案されたら受け入れます。年数を重ねたからといって、自分の手順が一番だとは思っていません。
「こだわる」か「こだわらない」かの二択ではなく、そのつど決めている、というのが実際のところです。
立ち仕事の体力は、人によって差が大きい
薬剤師の仕事は立ち仕事です。体力の話が出てくるのは分かります。
ただ、これは年齢では決まらないと思っています。30代でも立ち仕事がつらそうな人はいますし、60代でも元気に動いている人もいます。
年齢で線を引くより、その人がどうかを見るほうが実態に合っていると感じます。
年下の薬剤師との関係も、年齢だけでは決まらない
「若い薬剤師とうまくやれない」という理由も挙がっていました。年下から言われて、記憶に残っている言葉があります。
管理薬剤師をしていたときのことです。ひとりの新入社員に仕事のやり方を注意したら、「4年制卒のくせに」というようなことを言われました。
6年制を出た人と比べて、知識が少ない面はあるかもしれません。それでも、私は患者さんとのコミュニケーション力のほうが大事だと思っているので、あまり気にしていません。
こういう言い方をする人ばかりではありません。年齢で決まる話ではなく、その人個人の問題だと思っています。
そして、言葉の選び方は20代でも50代でも大切です。50代の薬剤師が同じことを言っていたら、まず雇ってもらえません。経験が浅く、その場の感情で出てしまった言葉なのだろう、と受け取っています。
人によって違うのは、職場に限った話ではありません。転職の相談でも同じで、同じ条件を伝えても、返ってくる答えは担当者によって変わります。→ 詳しくは薬剤師の転職エージェント:担当者選びが大切な理由で書いています。
管理薬剤師を引き受けるかどうかで求人の条件は変わる
ここから転職の話になります。現場で働くうえでは年齢だけで困ることは少ないのですが、転職となると、採用する側が条件を見るため、話は少し変わります。
年齢が上がってくると、管理薬剤師をやるように言われます。私は管理薬剤師の経験が7〜8年ありますが、今はやりたくないので、個人的な理由で断っています。
これは転職でも同じでした。転職の相談をしたとき、管理薬剤師の求人であれば、50代でも今の収入を維持したまま紹介できると言われています。
つまり、年齢だけで求人が無くなるわけではありません。どの役割を引き受けるかで、求人が変わります。→ 実際のやりとりは薬剤師の転職相談:「難しい」の中身は年齢ではなく条件だったに書きました。
50代の転職では、給料が下がることもある
今の年齢で転職すると、給料は下がると思っています。あえて給料の高い50代を雇いたいと、企業は考えないのではないでしょうか。
同じ仕事をしてもらうなら、人件費は低いほうがいい。採用する側の立場で考えれば、そうなるのが自然だと思います。
だからこそ、給料以外の条件で折り合いをつけられるかどうかが焦点になると思っています。私は40代で転職したとき、給料ではなく労働時間を優先しました。→ そのときの経緯は薬剤師は転職と副業どっちがいい?両方経験した私の選び方に書いています。
50代の薬剤師が転職するために必要な3つのこと
ここまで書いてきたことをまとめると、50代でも転職はできると思っています。ただし、条件があります。
①これまでの経験
いちばん大きいのは、薬剤師として続けてきた経験です。
逆に言うと、未経験で50代から始めるのは難しいと思います。一から覚えるには、覚えなければならないことが多すぎるからです。
製薬企業などで薬に関わる仕事をしてきた経験があれば、完全にゼロから始めるのとは違うかもしれません。ただ、現場を長く離れていた状態から始めるとなると、相当に大変だと思います。
②パソコンのスキル
電子薬歴もレセコンも、今の薬局はパソコンなしでは動きません。ここが苦手だと、年齢に関係なく厳しくなります。
特別なスキルが要るわけではありません。日々の業務で困らない程度に使えることが前提になります。
③希望条件を絞りすぎないこと
「在宅には行きたくない」というように条件を出せば、その分だけ求人は減ります。在宅は今の薬局の仕事の一部になっているので、外すと候補が狭まります。
何を優先して、何なら動かせるのか。ここを決めておくと、相談のときに話が早くなります。
ここまで書いた条件が自分の場合はどうなのかは、実際に求人を見てみないと分かりません。薬剤師専門の転職サービスなら、希望条件を伝えたうえで、今の求人の状況を聞けます。登録は無料で、転職の時期を決めていなくても申し込めます。
まとめ:使えるかどうかは、年齢では決まらない
最後に、この記事で書いたことを整理します。
- 現場で年齢のせいで困る場面は、ほとんどない。パソコンも新しい薬も、年齢で差がつくところではない
- ただし、覚えるのに時間がかかる人はいる。何歳でも努力は要る
- 転職はできる。ただし、これまでの経験・パソコンのスキル・希望条件を絞りすぎないことが条件になる
- 転職では給料が下がることもある。ただし、管理薬剤師のような役割を引き受けるかどうかで条件は変わる
「50代は使えない」と言われると、自分の働き方そのものを否定されたように感じます。けれど実感としては、年齢で決まっていることはあまりありません。
もし、50代で転職するか迷っているなら、年齢だけで考えるのではなく、今の経験や希望条件でどんな求人があるのかを確かめてみるのがいいと思います。
