医療・健康ジャンルの記事を外注するとき、ライターは決まっても「その内容が本当に正しいか」を誰が確認するのか、悩んだことはないでしょうか。

文章の読みやすさは編集者がチェックできます。しかし、書かれている医療情報が正確かどうか、薬機法に触れていないかどうかは、専門知識がなければ判断できません。

この記事では、医療記事の品質管理に「薬剤師によるチェック」がなぜ必要なのかを、記事を発注する側の視点で整理します。

なぜ今、医療記事に品質管理が求められるのか

医療・健康情報の記事は、他のジャンルよりも高い正確さが求められます。理由は大きく3つあります。

検索エンジンが健康・医療の情報を厳しく評価する

Googleは、人の健康やお金に関わる情報(YMYL=Your Money or Your Life)を特に慎重に評価します。健康・医療の記事は、専門性・信頼性が低いと判断されると検索順位が上がりにくく、場合によっては大きく下げられることもあります。

「誰が書いたか」「内容は信頼できるか」が問われるジャンルであり、専門家のチェックが入っていることは、品質を示す要素のひとつになります。

誤情報・薬機法違反のリスクは、掲載する側が負う

薬機法や景品表示法に触れる表現を公開した場合、行政指導・措置命令・課徴金といった対応を求められることがあります。そして、そのリスクを負うのは記事を書いたライターではなく、掲載した広告主・メディア側です。

つまり、品質管理を外注ライター任せにしてしまうと、リスクだけが発注側に残る構造になっています。

AIで作られた記事が「もっともらしい誤り」を含みやすい

近年はAIで下書きを作る現場が増えました。AIは自然な文章を高速で生成しますが、事実の裏取りは苦手で、古い情報や誤った内容を、もっともらしい文章のまま出力することがあります。

見た目の完成度が高いぶん、専門知識がないと誤りに気づきにくいのが、AI時代の品質管理の難しさです。

薬剤師チェックが防ぐ3つのリスク

薬剤師が記事をチェックすると、具体的に次の3つのリスクを減らせます。

①医療情報そのものの誤り

効能・用法用量・飲み合わせ(相互作用)・副作用など、医薬品や成分に関する記述は、少しの間違いが読者の健康に関わります。

薬剤師は、こうした情報を添付文書・公的機関の資料・ガイドラインといった一次情報で裏取りする習慣があります。「知っていることを書く」のではなく「根拠を確認して書く」姿勢は、医療記事の信頼性を支える土台です(医療記事の裏取りの実際は医療記事の数字・統計の裏取り実践で解説しています)。

②薬機法・景表法に触れる表現

医薬品でない商品(サプリメント・化粧品・健康食品)が、医薬品のような効果をうたうと薬機法に触れます。また、根拠のない「No.1」「他社より効果的」といった表現は景品表示法の問題になります。

薬剤師は、どの表現が問題で、どう言い換えれば適切かを判断できます。たとえば「疲れが取れる」を「日々の健康維持に」に直すといった具合です。

→ 具体的なNG表現は医療記事の薬機法チェック:やってはいけない表現一覧に、医薬品的効能効果という考え方は医薬品的効能効果とはにまとめています。

③海外基準の情報が混ざり込む

これはAIを使った記事で特に起きやすい落とし穴です。AIは英語圏の情報を多く学習しているため、海外では承認されているが日本では未承認の薬・効能・用量を、「日本でも使える」前提で書いてくることがあります。

日本で承認されていない効能を書けば薬機法違反になりかねません。薬剤師は「これは日本で承認されているか」が反射的に引っかかるため、こうした海外基準の混入を見つけられます。これは、一般の校正では気づきにくい専門的なチェックポイントです(AIを使った記事制作で気をつけている点はAIを使った記事制作の効率化でも触れています)。

ライターの校正と薬剤師チェックはどう違う

「校正はしているから大丈夫では」と思われるかもしれませんが、両者は役割が違います。

  • 文章校正:誤字脱字・表記ゆれ・読みやすさを整える
  • 薬剤師チェック:医学的な正確さと、薬機法・景表法のリスクを確認する

文章校正と薬剤師チェックの違いを2つのカラムで対比した図解。左(青)の文章校正は「読みやすさ」を整える作業で、誤字脱字・表記ゆれ、文章の読みやすさ、言い回しの統一をチェックし、編集者・校正者が担当する。右(ローズ)の薬剤師チェックは「正しさ・リスク」を確かめる作業で、医学的な正確さ、薬機法・景表法の表現、海外基準の混入をチェックし、薬剤師が担当する。下帯に「読みやすくても、中身が正しいとは限らない」

この2つは別の作業です。文章がどれだけ読みやすくても、書かれている効能が誤っていたり、薬機法に触れる表現が残っていたりすれば、記事としては成立しません。

なお、薬剤師の関わり方には「チェック(表現・内容の確認)」と「監修(監修者として名前を出す)」があり、目的によって使い分けます。両者の違いは医療ライターと医療監修の違いで解説しています。

薬剤師チェックを入れるべきタイミング

すべての記事に毎回チェックを入れる必要はありません。リスクの高い場面を優先するのが現実的です。

  • 新規記事の公開前:特にサプリ・化粧品・健康食品・美容医療など、薬機法の対象になりやすいジャンル
  • 既存記事のリライト時:過去に公開した記事が、今の基準では不適切なこともあります
  • 広告・LP・プレスリリースの公開前:薬機法の規制は記事本文に限らず、あらゆる媒体に適用されます
  • AIで下書きを作った記事:前述の「もっともらしい誤り」「海外基準の混入」を確認する

まずは影響範囲の大きいもの・リスクの高いジャンルから、と考えると導入しやすくなります。

チェックを依頼するときに用意しておくとよいもの

薬剤師にチェックを依頼するとき、次の情報があるとスムーズです。

  • 商品の分類:医薬品/医薬部外品/化粧品/食品のどれか(言える表現の範囲が変わります)
  • 記事の想定読者:誰に向けた記事か
  • 訴求したい内容:どんな効果・魅力を伝えたいのか

特に商品分類は、判断の出発点になる重要な情報です。「何を、誰に、どう伝えたいか」が共有できていると、単なる×判定ではなく「こう言い換えれば伝えられます」という前向きな提案につなげやすくなります。

まとめ:品質管理は「書いたあと」に効いてくる

医療記事に薬剤師チェックが必要な理由をまとめます。

  • 健康・医療情報は検索エンジンからも厳しく評価される(YMYL)
  • 誤情報・薬機法違反のリスクは、書き手ではなく掲載する側が負う
  • AIで作った記事は「もっともらしい誤り」「海外基準の混入」を含みやすい
  • 薬剤師チェックは①情報の誤り②薬機法・景表法③海外基準の混入という、校正では防げないリスクを減らせる
  • すべてに毎回ではなく、リスクの高いジャンル・場面から導入するのが現実的

記事は、公開したあとに誤りや薬機法違反が見つかると、修正や取り下げに大きな手間がかかります。専門家のチェックは、その前に立つ「守りの品質管理」です。

現役薬剤師として、医療記事の薬機法チェック・監修・執筆のご相談を承っています。「この記事を確認してほしい」というご相談だけでも構いません。詳しくはサービスのご案内をご覧ください。


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