市販薬(OTC医薬品)の記事を書くとき、「医薬品だから効果を書いていい」と思っていると、表現を誤りやすいです。
OTC医薬品は確かに「承認された効能効果」の範囲内であれば広告で訴求できます。しかし「承認効能を少し超えた表現」「安全性の過大強調」「根拠のない比較」は、薬機法第66条(誇大広告の禁止)に抵触します。サプリメントとは異なるルールがあるぶん、チェックポイントも変わります。
この記事では、OTC記事で問題になりやすい表現をNG・OK対比表にまとめ、提出前のチェックリストとして使えるようにしました。
OTC医薬品の薬機法チェックが難しい理由
健康食品・サプリと違い、OTC医薬品は「効能効果を書いてはいけない」わけではありません。承認された効能効果の表現であれば、記事内で使えます。
問題になるのは、次の3パターンです。
パターン1:承認効能を超えた表現
「風邪の引き始めに飲めば早く治る」「根本から症状を解消する」のように、添付文書に書かれていない効能を示唆する表現です。薬剤師として「そういう薬だ」と知っていても、添付文書に記載のない表現は使えません。
パターン2:安全性の過大強調
「副作用がない」「体に優しい成分だから安心」「妊婦・赤ちゃんでも使える」のように、安全性を断定する表現です。OTC医薬品にも副作用はあり、対象外の人もいます。根拠のない安全性の強調は薬機法・景表法の両方で問題になります。
パターン3:根拠のない比較・優位性表現
「〇〇より効く」「最も効果の高い成分を配合」「No.1処方」のような比較表現です。根拠となるデータなしに優位性を断言することはできません。
→ OTC記事でよくある落とし穴はOTC医薬品の記事で気をつける薬機法表現でも解説しています。
NG→OK言い換え対比表
カテゴリ別にまとめました。
効能効果の表現
承認された効能効果の範囲内で書くことが基本です。添付文書の表現をそのまま使うのが最も安全です。
| NG表現 | OK言い換え |
|---|---|
| 風邪を根本から治す | 発熱・鼻水・のどの痛みなどの風邪の諸症状を緩和します(添付文書に基づく) |
| 早期回復をサポート | 風邪の諸症状に(添付文書に記載のある効能の範囲で記載) |
| 症状の長引きを防ぐ | 〔使用不可。添付文書に記載がないため〕 |
| 胃炎を治す | 胃の不快感・胃もたれに |
| 痛みを完全に取り除く | 頭痛・生理痛などの痛みに |
| 熱をしっかり下げる | 発熱時の解熱に |
安全性・副作用の表現
副作用の否定・安全性の断定はすべてNGです。添付文書に「妊婦・授乳中の方は相談」とある場合も、「安心」と断定せずに「相談を促す」形にしてください。
| NG表現 | OK言い換え |
|---|---|
| 副作用がない | 用法・用量を守ってご使用ください |
| 体に優しい成分だから安心 | ご使用前に添付文書をよくお読みください |
| 自然由来だから副作用が少ない | 〔「副作用が少ない」の断定はNG〕 |
| 赤ちゃんでも安心 | 〔使用対象年齢の確認が必要。断定はNG〕 |
| 妊婦・授乳中でも飲める | 妊婦・授乳中の方は、ご使用前に医師・薬剤師に相談してください(添付文書に基づく) |
| 胃に優しい処方 | 〔根拠のある場合のみ。断定にならない表現で〕 |
比較・優位性の表現
比較広告は根拠があれば可能ですが、根拠なしの断定はNGです。根拠がある場合でも、調査期間・対象・サンプル数・実施主体が不明確な「No.1」などは、景品表示法上問題になることがあります。No.1表示に必要な根拠はNo.1表示とは?「満足度No.1」を書くときの根拠ルールで解説しています。
| NG表現 | OK言い換え |
|---|---|
| 〇〇よりよく効く | 〔根拠のある比較以外は使用不可〕 |
| 眠くなりにくい成分を採用 | 〔根拠なしの場合はNG。「ノンカフェイン」など成分事実の記載に留める〕 |
| 有効成分がたっぷり入っている | 〇〇mg配合(成分量の事実を記載) |
| No.1処方 | 〔調査条件を明記した根拠がない場合はNG〕 |
| 病院でもらう薬と同じ | 〔スイッチOTCの場合は「〇〇から転換されたOTC医薬品」などに留める〕 |
成分説明の表現
成分の作用機序を説明することはできますが、「この成分が〇〇に直接効く」という表現は医薬品の効能断定になります。
| NG表現 | OK言い換え |
|---|---|
| イブプロフェンはロキソプロフェンより胃に優しい | イブプロフェンはNSAIDsの一種です(比較断定はしない) |
| 炎症の原因に直接アプローチ | 痛みや炎症に関わる物質の産生を抑制する成分です |
| 即効性のある成分を配合 | 〔「即効性」は添付文書に記載がない場合はNG〕 |
| 24時間効果が続く | 〔添付文書に記載がある場合のみ使用可〕 |
第1類・第2類・要指導の表記
分類の表記は事実の記載なので問題ありません。ただし分類から誤った印象を与える書き方には注意が必要です。
| NG表現 | OK言い換え |
|---|---|
| 第1類だから一番よく効く薬 | 第1類医薬品は、特にリスクの高い成分を含む市販薬です(薬剤師からの情報提供が必要) |
| 処方薬より安全な第2類 | 〔「処方薬より安全」の断定はNG〕 |
| 要指導だから効果が高い | 要指導医薬品は、薬剤師による対面での情報提供・指導が義務づけられています |
グレーゾーンの判断基準
「添付文書に書いてある」は万能ではない
「添付文書に書いてある表現を使えば安全」は基本ですが、添付文書の表現を記事用に「少し言い換える」と途端にNGになることがあります。
たとえば添付文書に「発熱時の解熱」と書いてあるのを「しっかり熱を下げる」と書くと、効能の誇大表示と判断される可能性があります。添付文書の表現を使う場合は、文言をそのまま参照し、意味を超えない範囲で記事に組み込むことが原則です。
用法・用量の記載
記事内に用法・用量を書く場合は「添付文書・パッケージの指示に従ってください」という一文を添えます。同じ成分名の製品でも用法が異なることがあり、記事の情報が古くなることもあるためです。
スイッチOTCの扱い
スイッチOTCは医療用医薬品から転換された市販薬ですが、広告上は一般用医薬品として扱われます。「医療用と同じ成分だから効果が高い」「処方薬と同等の効き目」という訴求は、承認効能を超えた表現として問題になります。「医療用と同じ成分」と書く場合でも、「効果が高い」「同等の効き目」は避け、成分の事実と転換の経緯のみに留めてください。OK例:「医療用医薬品〇〇から転換されたOTC医薬品です」。スイッチOTC記事も参照してください。
「薬剤師に相談を」の締めは書く
OTC医薬品の記事では、「薬剤師・登録販売者にご相談ください」という一文を入れることを習慣にします。特に持病がある方・妊娠・授乳中の方・小児・高齢者・他の薬との飲み合わせが気になる場合は、この一文を必ず入れてください。記事の締めくくりだけでなく、対象を絞った内容を書く場合はその箇所にも添えると親切です。
提出前チェックリスト
記事を納品する前に、以下の項目を確認してください。
製品区分の確認
- 第1類・第2類・要指導・医薬部外品のどれか確認した
- 対象製品の添付文書・承認効能効果を確認した
- 記事内の効能表現が添付文書の範囲内に収まっている
NG表現のチェック(薬機法)
- 「根本から治す」「完全に解消」「早期回復」など添付文書にない効能表現がない
- 「副作用なし」「妊婦でも安心」など根拠のない安全性の断定がない
- 比較優位表現(「〇〇より効く」「No.1」)に根拠が示されている
- 成分説明が作用機序の説明に留まっており、効能の断定になっていない
- スイッチOTCの場合、「医療用と同等の効果」という訴求がない
用法・用量・対象の確認
- 用法・用量を記載している場合、「添付文書に従う」という注意書きがある
- 対象年齢・使用不可な方(妊婦・小児など)について断定的な安全性を述べていない
- 「薬剤師・登録販売者に相談を」という締めが入っている
全体の流れの確認
- 個別の表現はOKでも、記事全体で「必ず効く」「安全」という印象を与えていない
- アフィリエイト記事の場合、PR表記が入っている
まとめ
OTC医薬品の記事で気をつけるポイントをまとめます。
- 承認された効能効果の表現は使えるが、添付文書の範囲を超えた言い換えはNG
- 「副作用なし」「根本から治す」「早期回復」は承認効能にない→使えない
- 比較優位・No.1表現は根拠がなければNG
- 成分説明は作用機序の説明に留め、効能の断定にしない
- 「薬剤師・登録販売者に相談を」の一文を忘れない
健康食品・サプリの薬機法チェックについては健康食品・サプリ編チェックシート、医薬部外品・化粧品の薬機法チェックについては医薬部外品・化粧品編チェックシートもあわせて活用してください。