「使う前はこんなに気になっていた肌が、使った後はこの通り」——化粧品や美容医療、ダイエット商品の広告で、**ビフォーアフター(使用前後・治療前後の写真)**は強い説得材料としてよく使われます。

変化がひと目で伝わるぶん訴求力は抜群ですが、医療・健康・美容の分野では**「写真を並べれば自由に見せていい」わけではありません**。何の商品・どの領域かによって、使えるかどうかが大きく変わります。

この記事では、ビフォーアフターをどこまで使っていいのかを、ライターの目線でやさしく整理します。

ビフォーアフターとは

ここでは、使用前・使用後(あるいは治療前・治療後)を並べて、変化を見せる表現をまとめてビフォーアフターと呼びます。

  • 化粧品を使う前後の肌の写真
  • サプリを飲む前後の体型・体重の写真
  • 美容医療(脱毛・シミ取りなど)の施術前後の写真

こうした「変化の見える化」は、体験談・口コミと同じく、読み手に「自分もこうなれる」と強く思わせます。だからこそ広告として厳しく見られるのです。

なぜビフォーアフターは厳しく見られるのか

理由はシンプルで、ビフォーアフターは**「これを使えば・受ければ、こう変わる」と効果を保証する印象**を与えるからです。

  • 写真の変化が、そのまま効能効果の保証に見える
  • 「この人に効いた=あなたにも効く」と思わせる
  • 撮り方しだいで、実際以上に変化を大きく見せられる

実際の効果以上に良く見えてしまうため、薬機法(医薬品的効能効果の保証)や景品表示法(優良誤認)の問題になりやすいのです。

領域ごとに「使えるか」が変わる

ビフォーアフターは、何の商品・どの領域かで扱いが分かれます。ここが一番のポイントです。

ビフォーアフター写真が領域ごとに使えるかどうかを示した図解。化粧品・医薬部外品は△で効果・安全性を保証しない範囲だけ、健康食品は×で医薬品的な効果のビフォーアフターは不可、美容医療は△で限定解除4要件と治療内容・費用・リスクの記載があれば可。共通してNGなのは写真の加工・撮影条件をそろえない見せ方

領域 ビフォーアフターの扱い
化粧品・医薬部外品 効果・安全性を保証しない範囲なら使えることがある(△)
健康食品(サプリなど) 医薬品的な効果のビフォーアフターは使えない(×)
美容医療(クリニックの施術) 限定解除の要件を満たせば使える(△)

順番に見ていきます。

化粧品・医薬部外品:効果・安全性の保証になるとNG

化粧品や医薬部外品の広告ルールを定めた医薬品等適正広告基準では、使用前後の写真は「一律に禁止」というわけではありません。ただし、次のようなものは認められていません。

  • 承認された範囲を超える効能効果を想起させるもの
  • 効果が出るまでの時間や、効果の持続時間を保証するもの
  • 安全性を保証するもの

逆に、視覚的な事実の対比にとどまるものであれば認められる場合があります。たとえば、

  • 染毛料で、染める前後の色の対比を見せる
  • 洗浄料で、汚れた状態と洗い流した後の対比を見せる
  • 保湿クリームで、乾燥した角層とうるおった角層の図を見せる

といった、その商品が物理的に「そうなる」ことを示す範囲です。逆に、化粧品で「使ったらシミが消えた」肌のビフォーアフターは、化粧品に認められた効能効果を超えるため使えません。**境界線は「認められた効能効果や安全性を、写真で保証していないか」**です。

健康食品:医薬品的な効果のビフォーアフターはNG

サプリメントや健康食品などの食品は、そもそも医薬品的効能効果(病気が治る・体の働きが良くなる・痩せるなど)をうたえません。これはビフォーアフター写真でも同じです。

  • サプリを飲む前後の体重・体型の変化を見せる
  • 「飲む前」「飲んだ後」で肌や体の変化を見せる

こうした表現は、食品に医薬品のような効果があるかのように見せるため、無承認無許可医薬品とみなされるおそれがあります。「写真だから」「本人の許可を取ったから」では免れません。

美容医療:限定解除の要件を満たせば使える

一方、クリニックが行う脱毛・シミ取り・美容整形などの美容医療は、医療広告ガイドラインというまた別のルールで規制されます。

ここでは治療前後(ビフォーアフター)の写真は原則として広告できませんが、「限定解除」の要件を満たせば掲載できるという仕組みがあります。ウェブサイトなど、患者が自ら求めて見る媒体で、次の4つを満たすことが条件です。

  1. 患者が自ら求めて入手する情報を表示するサイト等であること
  2. 表示内容について問い合わせ先を明示していること
  3. 自由診療の通常必要な治療内容・費用を情報提供していること
  4. その治療の主なリスク・副作用を情報提供していること

つまり、施術写真を載せるなら、そのすぐそばに治療内容・費用・リスク・回数まできちんと書く必要があります。写真だけを「効果の証拠」として見せることは認められません。

共通してNG:写真の加工・条件をそろえない見せ方

どの領域でも共通してアウトなのが、写真を加工したり、撮影条件をそろえずに変化を大きく見せることです。

  • 明るさ・角度・メイクの有無を変えて、後の写真だけよく見せる
  • 修正アプリで加工した画像を使う
  • もっとも変化が大きい人の例外的な結果だけを載せる

たとえ「効果を捏造するつもりはなかった」としても、こうした見せ方は実際以上に良く見せる**誇大広告・優良誤認**にあたります。ここで大事なのは、アウトかどうかは作り手の意図ではなく、一般の消費者がその写真をどう受け取るかで判断されるという点です。「効果を保証しているつもりはない」でも、効果を保証していると受け取られる見せ方なら問題になります。ビフォーアフターは「事実をそのまま」が大前提です。

ライターが巻き込まれないための確認ポイント

実務でビフォーアフターを扱うとき、気をつけたいことを整理します。

  1. 何の商品・どの領域か確認する:化粧品/健康食品/美容医療で使える範囲がまったく違う
  2. 効果・安全性を保証していないか:化粧品なら認められた効能効果の範囲か、食品なら医薬品的効果になっていないか
  3. 美容医療なら限定解除の情報がそろっているか:治療内容・費用・リスク・問い合わせ先まで書いてあるか
  4. 写真が加工・演出されていないか:加工画像や条件をそろえない比較は誇大広告になる

ポイントは、ビフォーアフターは「写真を並べれば伝わる」ではなく、「その変化を保証する表現になっていないか」が問われるということです。原稿に施術写真や使用前後の画像が指定されていたら、書く前に「これはどの領域のルールか」と一度立ち止まる習慣が、自分とクライアントを守ります。

まとめ

ビフォーアフター(使用前後・治療前後の写真)について、ライター目線でまとめます。

  • ビフォーアフターは効果を保証する印象が強く、薬機法・景表法の問題になりやすい
  • 化粧品・医薬部外品は、認められた効能効果・安全性を保証しない範囲(色や汚れの対比など)なら使えることがある
  • 健康食品で医薬品的な効果(痩せた・体調が変わった等)のビフォーアフターは、無承認医薬品とみなされるおそれ
  • 美容医療は原則NGだが、医療広告ガイドライン限定解除4要件(自ら求める媒体・問い合わせ先・治療内容と費用・リスク)を満たせば掲載できる
  • どの領域でも、写真の加工や条件をそろえない見せ方は誇大広告・優良誤認になる

「このビフォーアフター、効果を保証していないか?どの領域のルールか?」——この2つを意識するだけで、危ない写真表現の多くは防げます。あわせて体験談・口コミは書ける?も読むと、「利用者の声」まわりの線引きがつかめます。


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