医療・健康系ライターとして仕事をしていると、「クリニックのコラム記事を書いてほしい」という案件に出会うことがあります。

このとき注意しなければならないのが、医療広告ガイドラインです。薬機法とは別の規制で、病院やクリニックのWebサイトに掲載するコンテンツには独自のルールがあります。

「薬機法はわかるけど、医療広告ガイドラインはよく知らない」という薬剤師ライターのために、書き方の実務目線で整理します。

医療広告ガイドラインとは

正式名称は「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」(厚生労働省)です。

医療法第6条に基づき、病院・クリニック・診療所が行う広告について規制しています。Webサイトのコンテンツも「広告」として規制の対象になります。

薬機法との違い

項目 薬機法 医療広告ガイドライン
対象 医薬品・医療機器・化粧品など「モノ」の広告 病院・クリニックなど「医療機関」の広告
根拠法 薬機法 医療法
主な規制内容 効能効果の誇大表現・未承認薬の広告など 虚偽・誇大広告、体験談、比較表現など

クリニックのHP記事を書くときは、薬機法+医療広告ガイドラインの両方を意識する必要があります。

医療広告ガイドラインで禁止されている表現

1. 虚偽広告

事実と異なる内容を書くことは当然NGです。

NG例

  • 「日本で唯一の治療法」(根拠なし)
  • 「100%完治します」(医学的に保証できない)
  • 「厚生労働省認可の治療」(実際には認可されていない)

2. 誇大広告

事実であっても、著しく誇張した表現はNGです。

NG例

  • 「最先端の治療を提供」(具体的な根拠がない)
  • 「どんな症状でも対応可能」
  • 「他院で治らなかった患者も改善」

3. 比較優良広告

他の医療機関と比較して優位性を示す表現はNGです。

NG例

  • 「地域No.1の実績」
  • 「他院より安い」
  • 「〇〇病院より丁寧な説明」

→ No.1表示に必要な根拠のルールはNo.1表示とは?「満足度No.1」を書くときの根拠ルールで解説しています。

4. 体験談・症例写真・口コミ

医療広告ガイドラインでは、患者の体験談・口コミを広告に使うことが原則禁止されています。

これはサプリや化粧品と大きく異なる点です。一般の健康食品ではユーザーの声を掲載することがありますが、医療機関のWebサイトでは使えません。

NG例

  • 「〇〇さん(40代女性):この治療で膝の痛みがなくなりました」
  • 「患者様の声」コーナーに治療効果の体験談を掲載
  • Googleレビューへの誘導(体験談の収集目的と見なされる場合)

→ 体験談・口コミがどこまで書けるかは体験談・口コミ・お客様の声は書ける?で詳しく解説しています。

ビフォーアフター写真について

施術前後の写真は、2018年の改正で条件を満たせば掲載できるようになりました。ただし、以下の条件がすべて必要です。

  • 自由診療である旨を明記していること
  • 費用・リスク・副作用を明記していること
  • 虚偽・誇大でないこと

条件を満たさないビフォーアフター写真はNGです。記事を書く際は、これらの情報が揃っているかをクライアントに確認してください。

→ ビフォーアフター写真のルールはビフォーアフターは使える?使用前後・治療前後の写真ルールで詳しく解説しています。

5. 治療効果の保証

治療の効果を断定したり、保証する表現はNGです。

NG例

  • 「この治療を受ければ必ず痛みが取れます」
  • 「3回の施術で改善します」
  • 「副作用のない安全な治療」

6. 費用に関する誇大表現

NG例

  • 「業界最安値」
  • 「他院の半額で受けられる」

書ける表現・使ってよいコンテンツ

医療広告ガイドラインには「広告できる事項」が定められており、それ以外の情報は原則として広告できません。

書ける内容の例

  • 診療科目・診療時間・休診日
  • 医師の氏名・専門医資格・学歴・経歴
  • 治療方法の説明(事実に基づいた客観的な情報)
  • 施設の設備・機器の説明
  • 費用の目安(保険診療・自由診療の別を明記した上で)

「広告」に該当しないコンテンツ

医療広告ガイドラインには「限定解除」という考え方があります。以下の条件を満たすコンテンツは、規制が一部緩和されます。

  • 患者が自ら求めてアクセスするコンテンツ(医療機関のWebサイト内のコラムなど)
  • 内容が虚偽・誇大でない
  • 問い合わせ先が明記されている

クリニックのWebサイト内のコラムも原則として医療広告ガイドラインの対象ですが、限定解除の要件を満たす場合に一部の規制が緩和されます。ただし、虚偽・誇大表現の禁止は引き続き適用されます。

薬剤師ライターが実務で気をつけること

「体験談・口コミ」は書かない

クライアントから「患者さんの声を入れてほしい」と依頼されることがあります。しかし医療機関のWebサイトでは体験談・口コミは原則NGです。依頼があっても、ガイドライン上禁止されていることをクライアントに説明し、断ることが薬剤師ライターの役割の一つです。

ビフォーアフター写真については、費用・リスク・副作用の明記など条件を満たせば掲載可能です。依頼されたときは、条件が揃っているかをクライアントに確認してから対応しましょう。

効果の断定・保証をしない

「この治療で〇〇が改善します」という表現は避けます。「〇〇を目的とした治療です」「〇〇に対してアプローチします」といった書き方に変えましょう。

NG→OK の例

  • NG:「膝の痛みが取れます」
  • OK:「膝の痛みの原因にアプローチする治療です」

「最先端」「最新」は根拠なしに使わない

根拠なく使うと誇大広告になります。使う場合は、具体的な根拠(学会発表・論文・承認年など)とセットで書くことが必要です。

自由診療を紹介する場合は費用を明記する

自由診療を紹介する記事では、費用の目安をできるだけ明記することが求められます。「要相談」だけでは不十分なケースもあります。

比較表現は避ける

「他院より」「地域一番」といった比較・優位性の表現は使いません。「当院の特徴」として客観的な情報を書くにとどめます。

まとめ:クリニックHP記事を書くときのチェックリスト

記事を書き終えたら、以下を確認してください。

  • 体験談・口コミを掲載していないか
  • 治療効果を断定・保証していないか
  • 「日本一」「No.1」など根拠のない比較表現を使っていないか
  • 「必ず治る」「100%安全」などの表現を使っていないか
  • 費用について誇大な表現をしていないか
  • 自由診療の費用を明記しているか(費用掲載がある場合)
  • 事実に基づいた客観的な内容になっているか

医療広告ガイドラインは、薬機法と並んで医療ライターが必ず押さえておくべきルールです。クリニック案件を受けるときは、この記事のチェックリストを手元に置いて確認する習慣をつけておきましょう。


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